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重い秋、吉村光篤さん逝く

 きょうのブログは、プライベートなことを記させていただきます。依然として続く寂寥感から前に進むために…。

 

「お上人、体調が悪いみたい」と知人が連絡をくれたのは9月中旬。お上人とは、富士市比奈の蓮池山長學寺の前住職、吉村光篤さん。すぐに、ご自宅へ。そこには、いつもの光景があり、種田山頭火に惹かれ、年々、風貌も山頭火に似てきた光篤さんがいました。

暗い面持ちで「最近、胃の調子が悪く、こんな状態で…」と差し出したのが内視鏡写真。一見して尋常ではないことが分かったものの、「今は医学が発達し、癌も治る時代だから」、それを伝え、一時間余、いつもの調子で互いに言いたい放題、最後は豪放磊落な光篤さんに戻り、その姿が最後でした。

 

一カ月後の10月中旬、早朝、夫人から「亡くなりました」との電話があり、ショックでした。厳しい状態とは承知しつつも、「半年は、もつだろう。正月に、また訪ねてみよう」、そう思っていたからです。

 

享年77歳。悔やみに寺に伺うと、介護疲れが判然として分かる憔悴しきった夫人が「あっという間に逝ってしまって…」。その言葉に「最後を看取ってくれたこと、そして長年、苦労をかけたことへの感謝を込めた、お上人流の奥さん孝行だったかもしれませんよ」、そんな言葉を返してきました。


 

在りし日の吉村光篤さん。今春、上梓した俳句集『婆
娑羅供戮ら。撮影者は富士市久沢の斉藤伸也さん

 

光篤さんは、僧侶であるとともに中学校の理科と国語の教師。趣味も多彩で、俳句、茶道、陶芸など。その趣味から総じていえることは「人が好き」でした。

教壇を去った後は、寺の敷地内に山小屋風の隠居小屋を作り、趣味を通して人との出会いを楽しみ、山頭火に惹かれていたこともあってか中国西域やヒマラヤ山麓を修行僧となって訪れていました。

最近は住職を息子さんに譲り、車の運転も辞め、定期的に送られてくる“俳句はがき”には『死ぬ時が死に頃でしょう 枯葉散る』『死顔を 撮るのはやめて あの世に行けません』など、人生の幕引きを覚悟したような句が記されていました。

 

事実、一年ほど前にお会いした時、「海野さん、俺は、いつ死んでもいい。自分の人生に満足している。だから健康診断には行かない。病気になっても医者には診てもらわない」と話していました。

 

 光篤さんとの付き合いは35年余前。その頃、自分はローカル紙・富士ニュースの記者で、“心の時代”を迎え、「紙面刷新、紙面充実には文化や福祉の取材を強化。取材するだけでなく自主事業も」との社の方針から『小説・随筆コンクール』(現在のエッセイコンクール)に取り組むことを決定。

 しかし、購読エリアである富士市と富士宮市が文芸普及事業として小説や随筆、詩、短歌、俳句、川柳などの作品を募集して優秀作品を一冊にまとめて発刊する『市民文芸』に取り組んでおり、そうした中にあって後発となる『小説・随筆コンクール』の開催にあたっては、文芸活動に取り組む人たちが「審査を得たい」と思っていただける文筆家に審査員に委嘱する必要がありました。

 

 そんな中、『戦艦武蔵』や『関東大震災』など一連のドキュメント作品で1973年に第21回菊地寛賞を受賞した小説家の吉村昭先生(2006年没)の厳父が富士市出身で、菩提寺が比奈の長學寺であることを知り長學寺へ。それが光篤さんとの初対面でした。

 

 事情を話し、「吉村昭先生に審査員の打診を」と依頼。当時、吉村昭先生は菊池寛賞を受賞した直後で大ブレーク中。加えて厳父の出身地とはいえ地方都市のちっぽけなローカル紙の依頼事。「断られて当たり前」と覚悟していたのですが、しばらくして光篤さんから「吉村昭先生に話したところ『引き受ける』とのことでした」との連絡が入り、以後、13年間もの長きにわたり吉村昭先生に『小説・随筆コンクール』の審査員を担っていただきました。

 同時に光篤さんとのお付き合いも始まり、訃報の連絡をいただけるような関係が続いていました。

 

 35年余、お付き合いをいただき、お世話になりながら何一つ、返礼ができないまま逝ってしまった光篤さん。

 多分、自分も年齢を重ね、老いた時、「どれだけ人として美しい後姿を見せることができるだろうか」「どれだけ社会に貢献できただろうか」と思い、その時、「俺は、いつ死んでもいい。自分の人生に満足している」と言い切ることができるだろうか。

 光篤さんが自分に向けて語った言葉を教訓とし、「俺は、いつ死んでもいい。自分の人生に満足している」と言い切れる人生を目指すことを返礼とさせていただこう、辛い思いの中で、それを胸に刻んでいます。                        
                            合掌

 
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