<< 視察研修報告(長崎県佐世保市、壱岐市)パート | main | 11月の最終日曜日は… >>
視察研修報告(長崎県佐世保市、壱岐市)パート
 

行政視察目的 長崎県壱岐市     

          

 壱岐市(いきし)は長崎県の壱岐島を主な行政区域とする市である。壱岐振興局の所在地。福岡市から北西に約80km、佐賀県北端部の東松浦北北西に約20kmの玄界灘上に位置する離島である。北西の海上に対馬が位置している。壱岐市域の大半を占める壱岐島は面積133.82km²、南北17km、東西15km。有人島としては壱岐島の南西部の沖合いに原島・長島・大島が、北側の沖合いに若宮島がある。また島周辺には17ヶ所の無人島がある。これらをまとめて壱岐と呼ぶ。市域全域が壱岐対馬国定公園に指定されている。

 

 市人口は昭和30年の51,765人をピークに年々減少、平成22101日現在の国勢調査時の人口は29,377人にまで減少し、過疎団体の指定を受けている。

 平成24年度の当初予算規模は一般会計が1911,000万円で、平成21年度の総生産額は約794億円。産業は、観光をはじめ農業、水産業、建設業、卸売・小売業と多岐にわたるものの、人口減少に加え高齢化が進んでいることもあって伸び悩んでいる。

 

 こうした中、壱岐市は、「観光振興は壱岐島の経済浮揚のために不可欠。恵まれた観光資源の活用と他産業(農漁業、交通、物産等)との連携を強化し、体験型・滞在型観光の促進と通年型観光への転換、北部九州をターゲットとした情報発信、交通アクセス、観光施設のハード面の整備等の総合的な施策が必要」として「いきいきわくわくコンビニ構想」と命名したソフト面を中心とした観光振興施策に乗り出している。

 さらにハード面として観光スポットを目指して“一支国(いきこく)”や“原の辻遺跡”に象徴される古くから東アジアとの交流拠点である壱岐島の歴史を伝える「一支国博物館」を約37億円の巨費を投じて建設、平成22314日に開館させている。

 

工業都市として発展してきた富士市は、鈴木尚市長が「富士市が今後も存続していくには新たな産業の創出が必要だ。それは観光だ」として観光振興に取り組んで10年を経過。

しかし、「しらす街道」や「つけナポリタン」など一部に振興策の成果は出ているものの、総じていえることは「いまだ五里霧中」。こうした中で富士山の世界文化遺産登録が目前と迫る中、新たな角度からハード、ソフト両面から、あの手この手の観光振興への取り組みが突きつけられている。

壱岐市のソフト、ハード両面からの観光施策を知り、「今後の富士市の観光振興にヒントが得られるのでは…」の期待をもって行政視察に臨んだ。

 


視察内容 
 ,いいきわくわく観光コンビニエンス構想について

 

 壱岐島には博多港から「最高速度100キロ」というジェットフォイル(高速ジェット船)で向かい、所要時間は1時間10分。港まで壱岐市議会事務局の職員がワゴン車で迎えに来て下さり、向かった先は「一支国博物館」だった。


   壱岐市の観光スポット、「一支国博物館」正面玄関前で



        「一支国博物館」の外観


 館内の会議室で、まず、議会事務局次長の米村和久氏から歓迎の言葉を受けた。この後、会派「耀(かがやき)」代表の望月議員が受け入れへの感謝と視察目的を伝え、担当課から「いきいきわくわく観光コンビニエンス構想について」と「一支国博物館の建設と運営について」の説明を受けることになっており、すでに説明員を担う担当課の企画振興部観光商工課課長の神照浩氏らも入室していた。

説明が開始されようとした、その時だった。壱岐市議会の市山繁議長が入室、市山議長から直々に歓迎の言葉を受けたが、議会も当局と二人三脚で観光振興を通して壱岐市の新たなまちづくりに取り組む意気込みを熱っぽく語り、さらに「次の会議まで少し時間がありますので…」と、アドバイザー的立場で説明の場にも中盤まで臨まれた。

観光振興に意欲満々、それをもって「議長さんは観光関経者…?」の思いを抱いた。が、後で知らされたことではあるが、議長は観光関係者ではなく、それでいて、観光振興に意欲満々も担当課の説明を受け、納得できるものであった。




        歓迎の言葉を述べる市山議長 


 視察前に我々が入手していた壱岐市の観光振興の情報は断片的なもので、視察目的としたソフト面の観光施策である
「いきいきわくわくコンビニ構想について」、ハード面の観光施策である「一支国博物館の建設と、その運営について」を把握するには、まず、壱岐市が策定、平成24年度から平成26年度の三ヵ年を計画期間とする「壱岐市観光振興計画(以下、振興計画)」を紐解く必要があり、説明も、そこから始まった。

 

 振興計画は、壱岐市の現状と将来について「平成22年の国勢調査で人口が3万人を割り、25年後には1万人台へ突入すると推測されている。
 人口減少社会では、国内の消費が減少することによる景気の悪化、雇用問題の発生が懸念され、また、人口減少に伴う人口構造の変化は社会保
障などにも大きな影響を与えることが予測され、これからの社会保障費の増大は国だけに留まらず地方の財政も逼迫させる要因になる」とし、観光については「観光ニーズが多様化する時代において、その地域ならではの自然や歴史、文化、産業などを活かした個性ある観光づくりは、国内外からの交流人口の増加に繋がり、地元での消費拡大が期待できることから人口減少社会における地域の活性化の起爆剤として注目されている」との認識を示している。

 

 この認識の上に立って計画策定の目的を「壱岐市の特性を活かした持続可能な観光のまちづくりを目指し、その基本となる理念・方針を掲げ、行政・市民・観光振興団体・民間事業者などが一体となって観光振興を推進するために策定する」とし、将来像を「海とみどり、歴史を活かす癒しのしま、壱岐(いきいきアイランド)」とする中、基本理念を「自ら関わり、共に創る自然の島づくり」、基本方針を「産業振興で活力あふれるまちづくり」としている。

 この振興計画は、長崎県観光振興基本計画との整合性も図ったもので、振興計画の牽引プロジェクトが「いきいきわくわくコンビニエンス構想」である。

 

「いきいきわくわくコンビニエンス構想」について、「壱岐市には、自然、歴史、温泉、神社、仏閣、祭り、イベント、食材(食)、土産品など多彩な魅力溢れる観光資源があり、その品揃えは、まさにコンビニ並み」としながらも「コンビニエンスストアは、誰もが入りやすい店構えや、店内の明るく清潔な雰囲気づくりにも心を配り、品揃えにも流行や利用者のニーズを直ちに反映させていく、という消費者本意の姿勢が見られ、店員も明るい対応ができる、といった人の心を満足される街中の小さな拠点になっている」とし、観光資源の品揃えがコンビニ並みであるものの、その活用には“人づくり”も重要であるとしている。

それを文言として示し、「豊富な観光資源と、農業、水産業、地場企業のバックアップを最大限に活かしながら『いつでも』『だれでも』『気軽に』『便利に』『満足のいく』多様な魅力の観光地づくりに取り組み、壱岐を観光のコンビニエンスストアとして『しまごと博物館』『しまごと大学』『しまごと元気館』を目指し、産・官・民一体となって盛り立てていく」としている。

この「いきいきわくわくコンビニエンス構想」の事業の方向性と主要事業には、次の5項目を掲げている。

 

事業の方向性

主 要 事 業

1.     壱岐市の名前を知ってもらおう

・情報発信事業

2.     みんなで取り組もうウェルカム運動

・スポーツ誘致事業

・福岡と壱岐交流推進事業

3.     壱岐市観光アップ事業

・一支国博物館建設事業

・古墳公園整備事業

・原の辻遺跡復元整備事業

・自然公園整備事業

・一支国歴史探訪事業(歴史遺産体験)

・グリーン(ブルー)・ツーリズム推進事業

・マリンレジャー・マリンスポーツの基盤整備事業

4.     訪れやすい観光地づくり

・運輸事業者、観光事業者との連携

5.     おもてなしの心が溢れるしまづくり

・体験観光インストラクター育成事業

・定住促進事業

・観光振興推進組織の機能充実、強化

 

 つまり、「島ごと観光資源とし、全市民的に観光振興に取り組んでいこう」という振興計画である。

 

我々は、振興計画の実現に向けた新たな推進体制の構築である「5.おもてなしの心が溢れるしまづくり」に組み込まれた「観光推進組織の機能充実、強化」に注目、その内容を問うと次のような説明を得た。

「これまでの観光振興団体は、振興と営業が混在、健全な組織といいがたい面があったと思われる。そのため振興計画をスタートするにあたり振興事業と収益事業を分け、振興事業については団体事務局が主体となり推進。収益事業につては、第三種旅行代理業の取得を行い、壱岐の魅力ある観光資源を活かしたプラットフォーム化(着地型旅行商品の提供者と旅行会社や旅行者の市場を繋ぐワンストップ窓口としての機能を担う事業体)を図り、着地型旅行の取り扱いを中心に展開していく」


 さらに、説明では、「従来とおり、観光業者や市民、一次産業、二次産業の関係者と連携を図っていく。この新たな観光推進組織では、『顧客満足度の向上』『おもてなしの心』などを大切にして経営努力されている観光事業者との連携も図っていく。収益事業は、他にも物販、施設管理受託などを積極的に行い、自己資本率を高め、各種の助成金を活用できる強い組織構築を図っていく」とも述べ、行政が旗振り役となっての観光振興への意気込みが示された。

 

 その意気込みは、どこから生じるのか。「振興計画はコンサルタント業者に委託して策定したものか」の質問に対する回答に、それが見えてきた。

「策定委員にコンサルタント業者を委嘱した計画そのものは我々が策定した」

 そう回答する観光商工課課長には、「自覚」と「責任」がみなぎり、振興計画の底流にある「壱岐市あげて…」から観光関係者でない市山議長の観光振興に向けての意欲満々な姿勢も理解できた。

 壱岐市の振興計画の成果が、どう出てくるか。注目すべき壱岐市である。

 

 

視察内容 
 一支国博物館の建設と運営について       

 壱岐市がハード面の観光スポットとして約37億円の巨費を投じて平成22年3月14日に開館させた「一支国博物館」は、“一支国(いきこく)”や“原の辻遺跡”に象徴される古くから東アジアとの交流拠点である壱岐島の歴史を今に伝えている。

敷地面積は約18,600屐建築規模は鉄筋コンクリート造り地下1階、地上4階建て、延べ床面積は約7,800屐説明では、「故・黒川紀章氏の国内における最後の作品」という。

 観光都市における行政視察のマナーとして観覧料(一般400円、高校生300円、小中学生200円)を支払って入館、職員の案内で内部を視察したが、外観は周辺の自然を取り込み、遠方から望むと角度によっては「小高い丘」と映るも、外観とは対照的に内部は、照明や構造の意外性、さらにハイテクの駆使で歴史に秘められた古代のロマンが溢れ出し、有料の観光スポット施設とあって内部のグレードも高い。

見せる工夫、理解してもらう工夫も随所にあり、例えばスクリーン映像と実際の原の辻遺跡を重ねた『ビューシアター』、七つのシーンに分けて160体のジオラマが活き活きと生活する様子を伝える『一支国トピックス』、現代から弥生時代までの壱岐と大陸、朝鮮半島の歴史を回廊式で伝える『通史エリア』、魏志倭人伝の国々の様子をワンタッチで検索、説明を受けることができる『魏志倭人伝の世界』など。

このほか、収蔵庫をガラス張りにして収蔵品も展示する工夫や、長崎県埋蔵文化財センターを兼ねた施設であることから観光・体験だけでなく学習、研究の機能も有している。



         「一支国博物館」の内部
 

建設総事業費約37億円の財源内訳は、合併特例債及びまちづくり交付金などの国の負担が239,000万円、県費補助などの県負担が109,000万円で、壱岐市の負担は22,000万円。合併特例債を活用し、県費を誘導して負担の軽減を図っての建設である。

運営は指定管理者とし、入館者数は開館初年度の平成22年度が128,172人、二年目の平成23年度が106,169人、三年目の本年度は10月中旬時点で約7万人となっている。

「リピーターを獲得できる観光スポットか…?」は、今後の入館者数で示されることになるが、「リピーターが期待できる」、それを感じさせる内容を有していると判断された。

 

 富士市では、市立博物館のリニューアル計画に取り組んでいるが、「観光を富士市の新たな産業に…」としている以上、観光スポットの要素も絡めてのリニューアルが期待され、その具現化にあたっては多角的複眼思考と、全国各地の先進的な取り組みや成功例の把握をもって取り組むべき、それを今回の視察により痛切した。

 

 

視察所感              

 

壱岐市の観光振興計画を把握する今回の行政視察は、我々にとって衝撃的なものだった。

「コンサルタント業者に依存することなく行政の自力で振興計画を策定」、その取り組みとともに、市山議長の歓迎の言葉、そして職員の説明には、観光振興を通して壱岐市の新たなまちづくりに取り組む意気込みが示され、それは積極的や前向きとされるポジティブを超えた挑戦的なアグレシッブなものだった。


 視察日は壱岐市内のビジネスホテル。説明会場の「一支国博物館」から宿泊場所までワゴン車で送ってもらったが、すでに勤務終了近くという中、議会事務局次長の米村氏が「壱岐市が自慢できる産品の一つに焼酎があり、酒造メーカーが観光客を受け入れている。試飲もありますで、立ち寄って下さい」。

「お言葉に甘えて…」と回答。酒造メーカーに向かう車の後方には観光商工課課長の神氏が乗車したワゴン車があり、二台で酒造メーカーへ。事前に連絡してあったのか社長自らの出迎えを受け、工場内も案内して下さった。


 続いて「民間経営でお勧めの土産センターがあります。こちらも見学して下さい」と申し出があり、この土産センターでも社長自らの出迎えがあり、社員の応対も「おもてなし心」に溢れ、我々全員、予定外の土産品を買い込むことになったが、何故か心が満たされた。

市役所における勤務時間を過ぎたものの、宿泊場所の途中にある壱岐島を代表する名勝地、『猿岩』にも立ち寄って下さり、その車中では、レンタカーによる観光客が増えていることも踏まえ、「観光案内板が不足。その整備を急がなくては…」と語り、現場主義による課題把握の姿勢も感じ取ることができた。


       壱岐市の名勝地、『猿岩』を背景に…


 さらに、である。宿泊がビジネスホテルと知り、「夕食は…」との質問を受け、「ホテルに着いてから探す」を返すと、「近くに、手ごろで、壱岐市名物を出す店を紹介します」。

ホテルに着き、紹介された店に向かい、暖簾をくぐると女将が満面に浮かべた笑みに歓迎の気持ちを示しながら「役所の方から連絡を受けています」。

行政視察であるものの現地ガイド&添乗員付きといった応対であった。


 観光都市を目指すために行政は何をすべきか。壱岐市の回答は明確である。「結果を出すまで行政が責任を持つ。官民協調をもって最善を尽くす」。それである。

富士市も心したい回答であり、議長が示された対応をもって、「それは市議会・議員も心したい回答である」。これを今回の行政視察の総括としたい。

| - | 22:10 | comments(0) | - |
コメント
コメントする









CALENDAR
S M T W T F S
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930 
<< November 2018 >>
SELECTED ENTRIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT