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研修報告(第15期自治政策講座in横浜)パート


 自分、海野しょうぞうが所属する富士市議会の会派「耀(かがやき)」の構成メンバー5人は、2013年5月13日から同14日まで神奈川県民ホールで開かれた自治体議会政策学会主催の『第15期自治政策講座in横浜』に参加しました。

 自治体議会政策学会の会長は、住民の信頼を失った地方議会が真にするべき議会改革とは何かを議員定数や議員報酬の削減から一歩踏み出し、実態と理論の両面から改革の提案活動を続け、地方自治体運営と地方議会の研究者として知られる竹下譲氏。

 我々の会派「耀(かがやき)」は、自他共に認める竹下氏の“追っかけ”。自治体議会政策学会が打ち出す政策講座に時間が許す限り参加しており、今回の講座テーマは『進む人口減少と自治体の政策〜右肩上がりの成長・発展から発想の転換を〜』。1講座当たり2時間、二日間で6講座というハードな内容でしたが、今日的課題を真正面から見詰めた講座であり、講座から多くの示唆を受けてきました。

以下、講座の概要を六回シリーズでお伝えします。

なお、通常、このブログは口頭語で記していますが、講座概要は報告書にまとめる関係から文章語としています。ご了承下さい。

 

 

【第1講義】


演  題
:『持続可能な都市経営の課題〜三鷹市の総合
     計画策定の実践から〜』

講  師:東京都三鷹市総務部政策法務課長一條義治氏


【講師プロフィール】
 1991年、早稲田大学大学院政治学研究科修士課程終了後、三鷹市に入庁。生活文化部コミュニティ課、総務部政策法務課、小平市企画課(派遣)を経て2000年より企画部企画経営室へ。同室では、自治基本条例、総合計画、行政評価、行政改革等を担当し、2011年度には企画経営課長として第4次基本計画の策定を統括。2012年度から総務部政策法務課長。主な著書に『市場化テスト‐制度設計・導入手続の仕組とポイント』(共著、岳陽書房)、『政策研究のメソドロジー‐戦略と実践』(共著、法律文化社)など。


 

        講義中の一條氏

 

講義内容

 
 講師の一條氏は、現役の三鷹市の公務員、身分は課長である。全国各地から地方議員が参加しての自治政策講座の講師役として白羽の矢が立ったのは、三鷹市が時代変遷をとらえ、時代ニーズに即した都市経営に取り組み、一條氏が、その政策立案の中心的人物として手腕を発揮、高く評価されているからにほかならない。

 

 講義では、

1.人口問題と自治体が直面する課題

2.持続可能な自治体経営のための改革・施策

3.三鷹市の市民参加と第4次基本計画策定の取り組み

の三項目を示して話を進めた。

 

 まず、「1.人口問題と自治体が直面する課題」について、主要先進国の人口構造や高齢化率を提示した上で、日本について全国平均と東京圏の年齢別人口構造や高齢化率予測を示し、直面する課題を「高齢化の進展が著しいのは大都市圏であって地方ではない。今後、都市と地方が再逆転する」とし、「先に高齢化した地方は今後の変化が緩やかであり、都市の方が高齢者の激増に見舞われる。都市では、財政が非常に傷み、国の支援も少なくなった今から福祉施設や病院を急増しなければならない」とした。

 

 この認識をもとに「2.持続可能な自治体経営のための改革・施策」については、三鷹市の財政・市税収入の予測を、楽観ケースと悲観ケースの両面から描きながら三鷹市を最も脅かすリスクに「財政基盤を揺るがす人口構成バランスの崩壊」と「近郊都市特有の高齢化による地域活力の停滞」をあげ、このリスクに対して、「正面から向き合い、未来を切り拓く新たな都市政策のあり方を提起、実践することが自治体に求められている」とした。

 その上で、三鷹市の持続可能な自治体経営の方向性を「生産年齢人口にターゲットを定めて誘致を行い、かつ同世代が一定程度、安定して転入するサイクルを持続。他の自治体との差別化も図り、生産年齢人口に評価される選ばれる自治体になるためには生活の質や文化水準の向上が重要」とした。

 この方向性を具現する施策には、「生産年齢人口の確保を目指す上では働く女性に配慮した施設の充実が有効。女性の就業率の向上やシングルマザーなどの増加に伴い、保育施設や子育て支援施策の拡充を行なう」や「主婦やリタイヤした高齢者が支援を受けてSOHO(ソーホー)起業をすれば実質的な生産年齢人口の増加となる。対外的に三鷹市の魅力的なSOHO支援事業をアピールすれば起業希望者を三鷹市へ誘致する人口誘導政策につながる」をあげた。

 

「3.三鷹市の市民参加と第4次基本計画策定の取り組み」については、「地域自治組織が高齢化、活動もマンネリ化している」とし、これを打破するために採用した「無作為抽出による市民討議方式」を紹介。無作為で抽出した18歳以上の市民1,000人にテーマを設定したまちづくりディスカッションへの参加を要請していくもので、「平成18年度に『子どもの安全・安心』をテーマに掲げて市民1,000人に参加要請したところ52人の参加が得られた」と述べた。

この「無作為抽出による市民討議方式」について一條氏は、「10年間、企画畑で業務を担ったが、市民参加を求め、参加してきた市民に知っている人が誰もいないのは初めてだった」と述べた。

一條氏の主張は、市民参加が時代ニーズであるものの、その手法は主要団体に代表者の選出を要請し、これに公募を加えるのが一般的。結果、同じ顔ぶれに…。それで由とするのではなく「声なき声」といわれる市民の意見を集めるためには受動姿勢を一転、無作為抽出により参加を要請していく能動姿勢に転じる必要があった、それである。

また、無作為抽出による参加要請で手をあげて参加してきた市民に対しては、「事前に資料を提供、充分な説明をすれば、従来の公募制による常連応募者のようなセミプロの市民と同じレベルとなり、議論に加わることができる。同じ顔ぶれから脱皮することにより貴重な意見が得られた」と述べた。


 

受講所感


 一條氏は講義のラストで「三鷹市は、行政の都市計画づくりは昭和40年代から職員がやることが伝統となっている。人口予測など専門的なノウハウを必要とする以外、コンサルタントには依存しない」と述べた。

 この伝統が全国から注目される自治体経営を支えるパワーであることはいうまでもない。

 

 講義終了後、受講者から「コンサルタントに依存しない有能な職員の確保は…?」の質問が出されたが、一條氏は、こう答えた。

 

「三鷹市の採用試験は、今年も東京都の採用試験日にぶつけて行ない、20人の採用に500人余の応募があった。資質を高めるための職員研修も重視している」

 

 つまり、三鷹市の採用合格を蹴って東京都に就職するような人材はいらない。「三鷹市のまちづくりを担いたい」、その信念を有する人材の確保である。

 

「国、都道府県、市町村の関係に依然として暗黙の上意下達があり、それを甘受する限り、地方の時代は訪れない」。一條氏の質問者への回答は、そんな回答であると受け止めたい。

 

【用語解説】

※メソドロジー能力を伝授するために体系づけた方法論。具体的な命題に対し、どのようにしたのか、というよりも1つ上の"メタレベル"で考えることになる。すなわち、成功するためにはAいう作業が必要であるが、そのAという作業が必要であるとどう判断するのか、またAという作業をどのようにすればよいか、について考えさせるもの。

SOHO(ソーホー)…Small Office/Home Office(スモールオフィス・ホームオフィス)の略。「パソコンなどの情報通信機器を利用して、小さなオフィスや自宅などでビジネスを行っている事業者」といった意味で使われる場合が多い。
                          (続く)

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