<< 研修報告(第15期自治政策講座in横浜)パート | main | 研修報告(第15期自治政策講座in横浜)パート >>
研修報告(第15期自治政策講座in横浜)パート
 


【第2講義】

 

演  題:『これからの健康・介護予防政策〜健康格差
            社会と自治体〜』

講  師:東京大学大学院医学系研究科准教授
                                      近藤尚己 氏

 

【講師プロフィール】 1974年、東京都生まれ。2000年に山梨医科大学医学部(現・山梨大学医学部)卒業。2006年から2009年まで米国ハーバード大学公衆衛生大学院に研究フェローとして在籍。2012年より東京大学大学院医学系研究科准教授。社会疫学及び公衆衛生学の研究と教育に従事。景気動向、所得格差、ソーシャル・キャピタルなど健康に影響を与える社会的要因についての実証研究と政策研究及びその方法論を専門とする。主な著書に『健康の社会的決定要因:疾患別レビュー』(共著、日本公衆衛生協会)、『保健医療福祉の研究ナビ』(共著、金原出版)など。

 

 

                  講義中の近藤氏

 

講義内容

 

 近藤氏の講義は、

1.   地域・社会と健康、日本はなぜ健康長寿世界一でなくなったのか

2.   健康格差の現状と課題

3.   自治体で、どう取り組むのか

の三つの視点から展開された。

 

 まず、「1.地域・社会と健康、日本はなぜ健康長寿世界一でなくなったのか」について近藤氏は、「かつて世界一の平均寿命を誇った我が国であるが、トップの座を譲って久しい。また、未曾有のスピードで進む高齢化も介護費用という重い課題を突き付けている。21世紀初頭からはじまった『健康日本21』では、メタボや糖尿病といった生活習慣病対策を進めてきたが、これらの疾病は減少していない。なぜだろうか」と投げ掛けた。

 

 この現状を「健康づくりというと、食事や運動、禁煙といったように、とかく個人の努力の問題とされやすい。しかし、近年、所得格差・雇用環境・地域のつながり・支え合いの仕組みといった社会環境が個人の健康に対して、かなりのインパクトをもっていることがデータで示されてきている。メタボも糖尿病も要介護も低所得者や社会的孤立者に多い。この現実を見逃してきた、あるいは無視してきたことが、これまでの健康増進施策の不振の原因と考えている」とした。

 

 この分析をもとに、「2.健康格差の現状と課題」では、「個人が置かれた社会環境と健康の問題は健康格差の問題と直結する。つまり、本人の努力の及ばない、その人の置かれた社会的に不利な状況により、不健康となってしまう状況である」とした上で、「例えば、金がなければ必要な医療にかかれない。我が国では、国民皆保険制度があるため、『そのようなことは起こらない』という人がいるかもしれないが、所得により医療アクセスに格差がある、という確固たるデータが多々存在する」と述べた。

 

 さらに、「所得格差が健康格差を生み出すのは、モノやサービスの問題にとどまらない」とし、「所得格差の拡大による心理的な負担やストレスにも目を向ける必要があり、このほかにも住環境や地域の交流・結束・信頼、社会参加機会、交通システムなども健康づくりには欠かせない」と、健康格差の解消には多角的複眼思考をもって対策を進める必要性を説いた。

 

 現状と課題を提示した後、近藤氏は今日的課題として突き付けられている「3.自治体で、どう取り組むのか」に話を進め、まず、自治体で今、求められている健康や介護の政策のキーワードとして『見える化』『連携』『まちづくり』の三点をあげた。

 

 そのうち『見える化』について、「健康格差を社会経済格差や地域格差の視点で把握し、政策が最重要ターゲットとすべき人々を見つけ出さなければ次の一手が見えてこない」とし、その最重要ターゲットとすべき人々を見つけ出す手法については「行政が、すでに保有している保険や税に関するデータを活用すれば、かなりのことが高精度で可能」とした。

しかし、実際は個人情報保護の名のもとに、その活用は進んでいないことを指摘しながら「マイナンバー法の施行などをモメンタムとして現状を打開する必要がある」とした。

 

キーワード二点目の行政における『連携』については、「縦割りの組織構造の中で健康部門のみに任せきりで健康づくりをしていては有効なアイデアは生まれず、たとえ生まれたとしても、それを活かすことはできない」と断言。「保健部門が福祉のみならず雇用、教育、地域振興、都市計画といった他部門と柔軟に連携できるシステムの構築が不可欠である」と説いた。

 

キーワード三点目の『まちづくり』については、「健康・介護対策は、まちづくりそのもの」と言い切り、「現在、コミュニティの中で人と人が繋がる仕組みを再構築する取り組みが各地でみられる。このようなまちづくりの取り組みが健康の維持増進に与える効果は大きい」と述べ、健康・介護予防政策を多面的にとらえての健康格差社会の解消の必要性と重要性を力説して講義を閉じた。

 

 

受講所感

 

 講義の冒頭、近藤氏は医療現場から健康・介護対策の研究の道に転じた動機を、「川で溺れて流れてくる人がいる。川下で、その人を救い、人工呼吸をする。しかし、また、溺れて流れてくる人がいる。この連続が現在の医療現場。これを解消、軽減していくには溺れて流れてくる原因を探り、手を打つことが必要だと感じたため」。平易なたとえで、説得力のある理由だった。

近藤氏の講義、そこに示された指針・示唆を、今後、富士市の健康・介護対策に活かすべく会派として行動に移していく、この決意を記して受講所感としたい。

 

【用語解説】

※モメンタム…勢い。はずみ。

| - | 11:32 | comments(0) | - |
コメント
コメントする









CALENDAR
S M T W T F S
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930 
<< November 2018 >>
SELECTED ENTRIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT