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研修報告(第15期自治政策講座in横浜)パート

【第5講義】

 

演  題:『人口減少時代の議会と情報〜ネット選挙
                  解禁の意味〜』

講  師:東海大学政治経済学部政治学科専任教授
                    小林隆 氏


【講師プロフィール】
 慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了。長年にわたり神奈川県大和市で市民参加のまちづくりを実践し現職。総務省のICTを活用した地域のあり方に関する研究会委員、地域情報化アドバイザーなどを歴任。主な著書に『ITがつくる全員参加社会』(共著、NTT出版)、『情報社会と議会改革‐ソーシャルネットが創る自治』(イマジン出版)など。



         
講義中の小林氏

 

 

講義内容

 

 今回の自治政策講座で、我々会派「耀(かがやき)」が最も注目し、期待していた講座である。


 講師の小林氏は、『人口減少時代の議会と情報〜ネット選挙解禁の意味〜』と題し、以下、次のような流れで講義を進めた。

 
1.   人口減少時代のはじまりと縮減社会

2.   縮減社会と住民自治の拡大

3.   なぜ情報が必要なのか

4.   ネットワークの三つの性質

5.   情報活用能力:高い行政・低い議会

6.   ネット選挙解禁の意味

7.   有権者の投票行動とネット選挙

 

 講義の中の「1.人口減少時代のはじまりと縮減社会」から「4.ネットワークの三つの性質」までは、時代変化と情報化の社会構造を分析。我々が興味を抱いたのは「5.情報活用能力:高い行政・低い議会」からで、小林氏は米国オバマ大統領や大阪市の橋下徹市長のホームページの活用やブログ、ツイッター、フェイスブックなどの利用による情報発信を紹介しながら「情報の活用にあたっては政治及び政治家の見える化が必要」とした。

 さらに、自治体のホームページについても見解を述べ、「行政の情報活用能力は高く、首長には巧みに情報を活用しているケースもある」とし、その一方、議会については「行政のホームページに抱合され、情報の活用が機能していない。行政から独立して情報の活用を図るべき」と述べ、ご丁寧にも独自の判断基準をもって「お粗末」とする事例もパワーポイントで紹介した。

 

「6.ネット選挙解禁の意味」については、「映像など多様な情報が利用できる」「有権者との双方向のコミュニケーションが図れる」「費用が安い」「時間的、空間的制約から解放される」などのメリットがある一方、「ネット利用に長(た)けた候補者が有利になる」「妨害行為に苦しむ」「誹謗中傷やなりすましなどが発生する」「ネット利用に伴う費用が増大する」などのデメリットが指摘されているものの世界的な潮流からもネット選挙解禁は時代ニーズであることを力説。「有権者にとっても、候補者にとっても情報不足やネットワークの状況に応じた柔軟な選挙行動が可能になる」とした。

 

「7.有権者の投票行動とネット選挙」については、まず、有権者の投票行動について長期的要因として「年齢、学齢、職業、居住地、所属団体などの社会学的要因」と「支持政党などの心理学的要因」、短期的要因として「政策の争点、態度、業績評価」と「地元利益誘導への評価を含む候補者イメージ」をあげて、ネット選挙時における、それぞれの注意点を提示した。

 その上で「1950年生まれ以前、以降、1975年生まれ以降の三つの年齢層の順に長期的要因の影響は薄らぐと思われる」とし、この判断をもとに「1950年以降に生まれた人の多い地域(選挙区)では、なおさらネットを利用すべき。特に1975年以降生まれは、成人した時に、既にウェブプラウザの普及がはじまっており、双方向コミュニケーションの能力は極めて高い」とした。


 また、ネットを通しての候補者イメージについて、「性格や風貌などとともに地元への利益誘導に対する評価が影響する。再選を目指す候補者は、過去の利益誘導の成果を丁寧に説明すべき。利益誘導の実績のない新たな候補者は、若中年層に向けて自らの政策が、なぜ地元利益を誘導できるのかについて明確に説明すべき」と言い放った。

 

 まとめとして小林氏は、ネット選挙活用にあたっての次のような注意事項を示して講義を閉じた。

 ・自己責任であることを忘れない。

 ・パスワードの管理などセキュリティ確保を怠らない。

 ・プライバシーに十分注意する。

 ・著作権、肖像権、商標、他人のプライバシーや評価に関わる情報
  は慎重に扱う。

 ・相手を思う気持ちを大切にする。

 ・多様な価値観を認める。

 

 

受講所感

 

 注目、期待もした小林氏の講義であったが終了後、我々会派のメンバー間には戸惑いが広がった。


【戸惑い、その 

 小林氏の「(議会の情報は)行政のホームページに抱合され、情報の活用が機能していない。行政から独立して情報の活用を図るべき」の主張は、ネット閲覧だけからの主張としか思われない。

 富士市議会の情報発信も行政のホームページに抱合され、数多いコンテンツの一つにとどまっているが、この点について過去、議会改革検討委員会や議会だより編集委員会で「議会独自のホームページの開設を」の意見が出されているものの、予算編成権を有する当局から費用面を盾に難色を示され、改善されていない。多分、他自治体の議会も同様であろう。

 ただ、小林氏の指摘を「学者も問題視している」とし、これを社会ニーズに結び付けて前面に押し出し、議会独自のホームページの開設に結び付けるための材料としていけば、それはそれで、ありがたい主張である。


【戸惑い、その◆

 ネットを通しての候補者イメージについて小林氏は、「性格や風貌などとともに地元への利益誘導に対する評価が影響する」とし、「再選を目指す候補者は、過去の利益誘導の成果を丁寧に説明すべき。利益誘導の実績のない新たな候補者は、若中年層に向けて自らの政策が、なぜ地元利益を誘導できるのかについて明確に説明すべき」と言い放ったが、今回の講座の受講者は首長ではなく地方議員が中心であった。

 近年、開かれた行政の推進により住民の行政への直接参加が図られ、富士市においては地区を巡回しての「市長行政懇談会」が開かれている。

 こうした中で地方議員の役割は、地元の利益誘導役から脱皮して公平、公正な行政施策の展開に向けての監視と提言にシフト。富士市議会では、平成23年4月施行の「議会基本条例」にも、それを明記している。よって小林氏の「利益誘導発言」には戸惑いがあり、加えて一般質問など発言権の行使による提言・要望が結果的に地元の利益誘導となっても、それを選挙時に打ち出し、丁寧に説明することは「有権者に嫌悪感を抱かれはしないか」の不安もある。

 ネット社会は情報が氾濫。ネットだけでなく、現代社会は、新聞、テレビ、雑誌などのメディアからも情報が押し寄せ、さらには今回の講座のように自由に選択して情報を得ることもできる。

 こうした押し寄せる情報、そして掴み取った情報を「どう処理して真理の道に結び付けていくかが大事、そこが問われている」とされている。まさに、それを痛感する講座であった。

 
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