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会派研修「これからの自治体政策―持続可能な社会への視点―」パート

第2講座

 

 講座名:TPPと自治体の課題―グローバル経済と地域

     再生の道

 講 師:鈴木 宣弘氏(東京大学大学院農学生命科学研究

科教授)

 

〔講師プロフィール〕

 1982年、東京大学農学部農業経済学科卒業。1982年、農林水産省入省。1998年、九州大学農学部助教授。2004年、九州大学大学院農学研究院教授。2006年より現職。1998年から2005年の夏期に米国コーネル大学客員助教授と教授を担う。

 主な著書に「食の戦争 米国の罠に落ちる日本」(文藝春秋、2013)、「TPPで暮らしはどうなる?」(岩波書店、2013)、「ここが間違っている! 日本の農業問題」(家の光協会、2013)ほか。


              講師の鈴木氏

 

〔講座内容〕

 講座で配布された資料で示された項目は次の通りである。

 

1.     TPP交渉の難航を、どう受け止めるか=いつ急展開するかは予断を許さない

2.     日本農業悪玉論

3.     日本は、よく頑張っているのか―反対の声が抑止力になっていることは確かだが

4.     日豪EPAの「ごまかし」

5.     TPPのレッドラインにできるか

6.     農産物関税問題は国民の命と健康の問題=国内禁止薬剤を輸入にも適用するのが関税引き下げの条件に

7.     取引材料のない、なし崩し的譲歩の交渉

8.     国民に対する数え切れないウソの山―決議された「国益」6項目は、すでに破綻

9.     「TPP断固反対」のウソ

10. 「聖域は守る」のウソ

11. 米国のダブル・スタンダード=野放しの米国輸出補助金に対する相殺関税の正当性

12. 「安全基準、軽自動車区分など、自動車についての日本の独自性は守る」のウソ

13. 「保険の独自性は守る」のウソ

14. 「BSEなどの食の安全基準は守る」のウソ

15. 遺伝子組み換え(GM)食品のさらなる拡大

16. 食品添加物の基準緩和や表示の問題

17. 「医療、薬価制度は守る」のウソ

18. 「TPPに参加しないと産業が空洞化する」のウソ

19. 「国家主権を侵害するISD(投資家国家間紛争処理)条約に反対する」のウソ

20. ISDS条項が日豪で見送られたことの意義

21. 「TPPは他国間交渉だから大丈夫」のウソ

22. 「交渉参加しないと情報が出せない」のうそ

23. 「国益は守る、信じてほしい」「席を立って帰ってくる」「最終的に署名しない」のウソ

24. 有能な官僚による特別背任罪

25. P4協定を、なぜ解明しないのか

26. 韓米FTAを説明しないように指示

27. 殺人罪でも捕まらない日本社会の異常

28. 1%の1%による1%のための協定

29. 「経済学」を利用した「1%」ムラの暴走

30. 「1%」と結び付く政治家、官僚、マスコミ、研究者の暴走

31. 「例外なしのTPPが一番レベルの高いFTA」のウソ

32. 農業攻撃をめぐるウソ

33. 「農業対国益」のウソ

34. 「食料自給の必要はない」のウソ

35. 競争力ではなく食料戦略が米国の輸出力を支える

36. 「日米安保で守られているから仕方がない」のウソ

37. 「TPPで過保護な日本農業を競争にさらして強くし輸出産業に」のウソ

38. 国土、領土問題

39. 「農業が障害でFTAが進まなかったのだからTPPしかない」のウソ

40. 「農業には所得補償をすれば大丈夫」のウソ

41. 「輸出米は価格上昇しているから大丈夫」のウソ

42. 「日本の農産物は品質がいいから大丈夫」「世界は供給量が限られているから大丈夫」のウソ

43. 食料の国家戦略の再構築

44. 自分たちの食は自分たちが守る

45. 農業が地域コミュニティの基盤を形成していることを実感し、食料が身近で手に入る価値を共有し、地域住民と農家が支え合うプロジェクト

46. 食に安さだけを追求することは命を削り、次世代に負担を強いること

47. 米国に住むとアレルギー疾患リスクが上昇(米研究)

48. 食の安全にかかわる重大な情報が開示されていない

49. いまこそ冷静な選択を―アジア主導の柔軟で互恵的な経済連携が世界の均衡ある発展につながる

50. この国に未来あるのか―「99%革命」のとき

 

 司会者は、講師の鈴木氏を「日本のTPP(環太平洋連携協定)参加反対の急先鋒の農学者」と紹介。その紹介通り、鈴木氏は口角泡を飛ばし続けて日本のTPP参加の問題点を多角的複眼思考をもって語った。項目も衝撃的な文字が羅列されていたが、語る内容も衝撃的なものだった。

 以下に、その一部を記す。

 

   総理の保身のために国民の命をオバマさんの土産に差し出されてはたまらない。

   「1mmたりとも譲らない」と頑張ったが、米国から「全部やれ」と言われ、それでも、もう決めるしかないから、中間をとって、このくらいで…と、さらなる譲歩で決着させようとする。そういうシナリオの進行途中なのである。

   「肉や乳製品などが安くなるからよいではないか」という消費者は、一部で発ガン性リスクが懸念され、日本では使用が許可されていない成長ホルモン入りの豪州産牛肉、遺伝子組み替えの牛成長ホルモン入りの米国乳製品の摂取が増えることの健康リスクの問題をもっと認識すべきである。

   旧政権を「公約違反だ」と批判し、「TPP断固反対、ブレない、ウソつかない」を公約として全国の地域の声を集めて登場した新政権が舌の根も乾かないうちに、もう約束を反故にし、信じがたい公約違反を犯した。TPPに「賛成」か「反対」かの以前の問題として、いとも簡単に公約違反が繰り返される政治を国民は、どこまで許すかが問われている。

   TPPによる日本唯一のメリットともいわれる米国の自動車関税撤廃についても、米国側は25年〜30年の猶予期間を設定する上、日本の自動車市場における米国車の浸透率が、ある水準を超えなければ30年後も、いまの半分の関税は残し、その後、永久的に維持するとまで主張している。すべてにおいて、相手国だけを自由化させようとするのが米国の「非対称的な貿易自由化」の本質である。

   フランスのカーン大学におけるM社の遺伝子組み替えトウモロコシのラットへの給餌実験(2012年)で痛々しいガンの発生が確認された。ラウンドアップ(枯葉剤)をかけても枯れない遺伝子組み替えトウモロコシの残留毒性も調べられた。「日本でもラウンドアップ(枯葉剤)を使っているのではないか」と言われるが、畦などの草取りに使うのであって、それを作物にかけるなど考えられないが遺伝子組み替え作物には、それがかけられている。しかも、耐性雑草が増えてきたため米国では残留基準が緩められ、さらに散布量が増えている。

   M社などの遺伝子組み替え作物は、「知的財産」として法的に保護されているので、農家がM社の遺伝子組み替え大豆の種から収穫した大豆から自家採取した種を翌年まくことは「特許侵害」になる。在来種を保存しようとしても遺伝子組み替え作物の花粉の飛散で“汚染”され、また、自分の種と思っていた在来種ベースの種も知らぬまにバイオメジャーの品種登録で自由に使えなくなる事態も数多く報告されており、「世界の食料生産・消費・環境が遺伝子組み替え種子で覆い尽くされてしまう」と心配する声もある。

   なぜ、わずかな人達の利益が尊重されるのか。それは、その選挙資金がないと大統領になれない政治家、天下りや回転ドア(食品医薬品局の長官と製薬会社の社長が行ったり来たり)で一体化している一部の官僚、スポンサーでつながる一部のマスコミ、研究費でつながる一部の学者などが1%の利益を守るために国民の99%を欺き、犠牲にしても顧みないからである。

   TPPは市場最悪の選択肢である。TPPで食料自給率が農水省試算のように20%前後になったら国民の命の正念場である。

   「日本の農業は鎖国してきたのだから、もっと開放しなければいけない」というのもウソである。国民の体の原材料の61%は海外に依存しているから原産国ルールで言えば日本人の体は、もう国産とは言えないほどに市場開放されているのが現実なのだ。誤解されているが野菜の関税3%に象徴されるように、すでに日本の農産物の9割の品目は低関税なのである。平均関税率は12%で、EUの半分程度と、世界的にみても低い水準だ。

   安倍総理の「10年で農業所得倍増計画」にも驚くしかない。TPPに参加して所得のセーフティネットを解体する農政改革をやって、どうやって農業所得が倍増できるのか。どうも、こういうことらしい。「99%の農家が潰れても1%の残った企業的農業の所得が倍になったら、それが所得倍増の達成だ」。しかし、そこには、伝統も、文化も、コミュニティもなくなってしまっている。

 

〔受講所感〕

 講師の鈴木氏は、時にユーモアを交えながら講座を進めたが、その中に、こんな発言があった。

「反対を主張していることから『CIAに狙われている。金髪の女性が近づいてきたら気をつけろ。通常では、お前には絶対にありえないことだから』と忠告してくれる人がいる」

 この発言に会場からは笑い声もあがったが、我々は講座にメリハリをつけるためのユーモアセンスからではなく、「忠告を待つことなく、自らも身の危険を感じている、それ故の発言ではなかったのか」と受け止めた。

 この受け止め方をもとにしての受講の所感を一言で記せば、「TPP参加問題は国政だけでなく地方の問題でもあることを投げ掛けられた」である。

 鈴木氏は、日本のTPP参加反対の急先鋒の農学者で、反対を声高に主張しながらも、今後の展開については「米は守ることができるだろう。しかし、肉や乳製品については酪農農家への補助金支出という姑息的な手法もって関税撤廃に向かうことになるだろう」と予測。すでに日本が世界の中の日本、そして日本が米国から有形無形の庇護を受けている現状認識をもっての冷静な予測といえよう。

「鈴木氏は、TPP参加のダメージを最小限にするために反対を声高に主張している」、そう読み取った受講者から「地方議員としてできることは『TPP参加に反対』、あるいは『慎重に対応すべき』などの意見書を議会として決議して国・政府に提出することぐらいしかできないが、このほか、地方議員として何ができるのか、何をすべきなのか」の質問が提示された。

 この質問に鈴木氏は、こう答えている。

「(この私の講座で)TPP参加に多くの問題があると受け止めた方は、それぞれの立場で意見を発信してほしい」

 日本の食料自給率が39%という中、静岡県の自給率は14%、工業都市・富士市においては代表的な農業産品である茶がカロリーにカウントされないこともあって自給率は、わずか7%(2010年農業センサス)にとどまっている。

「我々は、食料自給率が、わずか7%に過ぎない富士市の議員として、そして市民として、鈴木氏の主張、そして質問に対する鈴木氏の答弁を“頂門の一針”と受け止めなければならない」、その思いが募っている。

                                                                                           (つづく)


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