きょう6月4日のローカル紙に、「富士市が設置している自殺者対策庁内連絡会(委員長・保健部長)の平成26年度第1回会合が開かれ、健康対策課が平成25年一年間の市内の自殺者数を報告した」との記事が掲載されていました。
その記事の内容、衝撃的なものでした。
記事が伝えた報告は、「平成25年の全国の自殺者数は2万7,283人で、15年ぶりに3万人を下回った平成24年から、さらに減少、という中で平成25年の富士市の自殺者数は66人(富士警察署発表では71人)。前年の平成24年よりも15人も増加」でした。
日本における年間の自殺者数は、平成10年から3万人を超える状態が続いたことから国は平成18年に「自殺対策基本法」を施行、国を挙げて自殺予防対策に取り組んでいます。
こうした中、富士市は静岡県と共に『働き盛りのメンタルヘルス日本一を目指して』をスローガンに掲げ、『富士モデル事業』とする自殺予防対策事業を全国に先駆けて進めてきました。
その『富士モデル事業』は、自殺者が多い中高年層に焦点を当て、自殺の背景にあるうつ病の身体症状である睡眠障害に着目。うつ病にかかった人は、まさか自分が「うつ病」だとは気づかず、「眠れない」「食欲がない」といった身体の症状を訴え、かかりつけ医を受診するケースが多いことから医師会の協力を得て、かかりつけ医をうつ病の早期発見・早期治療のゲートキーパーと位置づけ、平成19年7月から市内の医療機関にはモデル事業用の紹介状が備えられ、かかりつけ医・産業医から精神科医へ速やかに紹介できるシステムの運用を開始。
さらに平成19年10月からは、薬剤師会の協力のもと、睡眠薬をよく買う人などに対し、薬剤師が不眠症状などを確認し、うつ病の疑いがある場合には精神科への受診を促す取り組みも開始しています。
こうした取り組みが実った形で平成17年に67人を数えていた市内の自殺者は平成18年には51人、平成19年には49人と減少傾向を示したのですが、ここにきて増加に転じています。
全国では減少傾向を示しながら富士市は増加。しかも全国に先駆け、医師会や薬剤師会などの協力も得て自殺予防対策事業に取り組みながらの増加。自殺者数をとらえれば予防対策前に戻る。よって衝撃的なものでした。
特に平成25年の自殺者66人を年代別でとらえると40代が13人(前年7人)、50代15人(同8人)と予防対策の重点層とした中高年層が倍増。この点も衝撃的なものでした。
増加した、その一点をとらえて「これまでの自殺予防対策事業の効果に疑問点が打たれる」と言い放つことは予防事業に取り組む関係機関に失礼であり、前年対比という短期ではなく長期的な視点で、その効果を検証すべき。その一方、市内の自殺者が増加、これを由々しき現実と受け止めなければならない、そう思っています。
医療機関の協力を得るだけでなく、市や県は、精神科・心療内科などの医療機関を受診していない人を対象に、本人をはじめ家族や事業者を対象にした相談体制も整え、「疲れているのに二週間以上眠れない日が続いている」「食欲がなく体重が減っている」など心の健康状態のチェックポイントの周知活動にも取り組んでいますが、自殺予備軍に向けての、そうした、あの手この手の対処療法的な予防事業だけでなく、今後は大所高所に立脚した取り組みの強化も必要かもしれません。
自殺予防のベースとして、市民の皆さんが「このまちに住んで良かった。住み続けたい」、それを実感できる富士市づくりにアクセルを踏み込み、保健のみならず福祉や芸術文化、スポーツなど全方位的に具体的な施策を打ち出すことが必要ではないか。「議員・議会の立場から市政に参画する者として責任は重い」です。