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望月武君に捧げた弔辞

 昨日(5月17日)、富士市在住のシナリオライター&小説家、望月武君(享年48歳)の葬儀に参列、弔辞を捧げてきました。

「生涯、武君の事を忘れまい」、その思いを込めて、ここに捧げた弔辞の全文をアップします。

 

 

  弔辞

 

 

 これから天国へ旅たつ望月武君に哀悼の一文を捧げます。

 

 あなたは、私が勤務していたローカル紙・富士ニュース社の社員でした。もう二十数年前、あなたは二十歳前半、小説家志望でした。

 

 残業中の事、「編集長、読んでもらえますか?」と声を掛けて差し出したのは四百字詰め原稿用紙、五十枚程度の作品で、確か中学校が舞台の、いじめを題材にした作品だったと記憶しています。

 小説家志望とあって読みやすく、内容も破綻のないものでした。

 

 読後、「まず身近なコンクールに応募してみては、どうか」とアドバイス。それを受け、富士市教育委員会主催の『ふじ市民文芸』や、静岡県教育委員会主催の『県民文芸』などの小説部門に応募、入賞・入選を重ねていました。

 

 そして数年後、あなたから、こんな別れの挨拶がありました。

「退社することになりました。どうしてもプロになりたくて…」

 上京してシナリオライターの養成学校に入学する、とのことでした。

 私は、あなたの小説家志望に対し、「厳しい道。趣味の範囲でやったら」とアドバイスしてきたものの、その真剣な眼に圧倒され、「挑戦できるのは今しかない。頑張ってみな」、そう激励して送り出しました。多分、挑戦を重ね、プロへの道の厳しさを知り、それでも挑戦したことへの満足感を持つなら、それも悔いを残さない青春だ、そんな思いでした。

 

 うれしい誤算の朗報は、それから2、3年後、テレビニュースが「今年の読売テレビシナリオ大賞は富士市出身の望月武氏の『フレンチポテトカップ』に決定」と伝えました。1998年でした。

 読売テレビのシナリオ大賞は、文学界でいえば芥川賞や直木賞にあたる価値あるもので、大賞受賞作品として2時間のドラマ化され、テレビ放映されています。

 

 この作品でシナリオライターとして中央デビューを果たし、以後、日本シナリオ作家協会に所属してテレビや映画、舞台など幅広いジャンルで作品を手掛け、さらに長編小説『テネシー・ワルツ』が2008年の第28回横溝正史ミステリー大賞でテレビ東京賞に輝き、シナリオライターに続いて小説家としても社会的に認知を受ける受賞でした。

 

 しかし、確かな実績を築き上げながらもシナリオライター・小説家として食っていける状況ではなく、富士市に居住し、アルバイトで生活費を稼ぎながら書き続けていました。

 それは“物書き”としてのポリシーを貫いていたためです。「書くことに追われることなく、自分が書きたいことを書く」、そういったポリシーでした。

 シナリオライターにおいては視聴率至上主義、小説においては奇抜さや、破壊と暴力のバイオレンスを求める出版界とは一線を画し、今後も人間の深層心理を見詰め、人としての真の幸福とは…、それを世に提示する作品を書き続けていく、私は、そう受け止めていました。

 

 武君なりの執筆活動を続ける中では、富士市教育委員会の『ふじ市民文芸』の小説・児童文学部門の審査員や、かつて勤務した富士ニュース社の紙面、名画紹介シリーズ『シネマいま、むかし』の執筆を担い、富士市の文芸文化の振興にも貢献していました。

 

 私が、あなたに最後に会ったのは、今年3月で、『ふじ市民文芸』の第51号表彰式に合わせて行われた『文芸フォーラム』でした。

 あなたの執筆活動と、その執筆姿勢にエールを送る思いも込め、フォーラム主催者として文芸講演会の講師を依頼したもので、あなたは1時間余にわたり『ひとつのアイデアから作品が完成するまで』と題して作品づくりのコツを参加者に伝授しています。

 

 講演終了後、「最近、どう…?」と聞くと、満面に笑みを浮かべながら「長編小説を執筆中です」との返事がありました。それが、私が聞いた、あなたの最後の言葉でした。

 

 あまりにも早すぎる旅たちは、ただただ、残念であり、無念ですが、あなたが遺した作品は時空を超え、多くの人たちの心の中に生き続けていく、私は、そう確信しています。

 

 これから旅たつ先の天国で未完の小説を書き上げて下さい。いずれ私も訪れます。それまでに作品を仕上げておいて下さい。それを読ませて下さい。

 だから「さよなら」とはいいません。「また、会おう」、この言葉を霊前に捧げ、私の鎮魂の思いとさせていただきます。

 

平成27年5月17日

 富士市議会議員 海野 庄三

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