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ノーベル文学賞、受賞のボブ・ディラン氏と、今年も落選の村上春樹との違いとは…

 10月13日に今年のノーベル文学賞は米シンガー・ソングライター、ボブ・ディラン氏(75)と発表され、毎年、日本のマスコミが「有力候補」としている作家の村上春樹氏(67)は“今年も落選”…という結果でした。

 発表なるも、その後、授与を決めたスウェーデン・アカデミーの事務局長が地元のラジオ番組で「授与発表後、ボブ・ディラン氏を探そうと試みたが連絡が取れない。直接の授与連絡を断念」と語ったことから、今、ネット上では「12月10日の授賞式にボブ・ディラン氏は出席するのか」、「受賞を辞退するのでは…」が話題となっています。

 

「その後…」は、さておき今年のノーベル文学賞がボブ・ディラン氏に決定したことは事実であり、同時に「なぜ、村上春樹氏は受賞できないのか」の疑問が改めて浮上しています。

 

 その疑問は自分も抱いていた疑問。さらには、村上春樹文学への飽くなき疑問、「その魅力とは…」も抱え込んでいました。

 10年前までジャンルは違うものの活字相手を生業としていたこともあって、抱え込んでいた2つの疑問に向き合ってきたことから、少々、長文になりますが、きょうのブログは表題を『ノーベル文学賞、受賞のボブ・ディランと受賞を逸した村上春樹の違いとは…』とし、あれこれ記します。得手勝手な謎解きであることを事前にお断りしておきます。

 

 まず、1つ目の謎、「なぜ、村上春樹氏は受賞できないか」について…。

 

 村上春樹氏は、『風の歌を聴け』(1979年)で文壇デビュー、『ノルウェイの森』(1987年)で爆発的な人気を博して人気作家となっています。

 

 欧米以外の国々に暮らす作家がノーベル文学賞の候補者となる条件の一つに、その中心的作品のいくつかが英語をはじめとする欧米語に翻訳されていることがある、と言われています。

 その意味では、欧米各国語だけでなく中国語、韓国語、ベトナム語、スペイン語、トルコ語など約50カ国語に翻訳され、世界中に何千万人もの読者を持つ村上春樹氏が、毎年のようにノーベル文学賞の候補に挙げられてきたのは、2006年にノーベル文学賞受賞の登竜門と言われるチェコのフランツ・カフカ賞を受賞後もエルサレム賞(イスラエル 2019年)やカタルーニャ国際賞(スペイン 2011年)などの国際的な文学賞を受賞していることを考えれば「当然」と言えるものです。

 

 然るに「今年も落選」、これについて村上春樹作品を読み続け、今年7月に『村上春樹批判』(日中同時出版 アーツアンドクラフツ刊)を上梓した評論家の栗原裕一郎氏は、「村上春樹の落選は、大騒ぎするようなことではなく、納得できるものであった。ノーベル文学賞というのは、人気ではなく、その文学がどんなメッセージを内包しているかが重要だ、と思っているからである」とのメッセージを発信しています。

 

 評論家、栗原氏の主張を、そのまま受け止めて謎解きとすればいいのかもしれませんが、こうした中、「今年も落選」を伝えるニュースで解説者が発した言葉が印象的でした。

 

「世界的名声があるもののスウェーデンでは村上春樹作品は、あまり読まれてない」

 

 この言葉を受け、1つ目の謎は、「なんとなく氷解」といったところです。

 

 次の2つ目の謎、「その魅力とは…」について…。

 

 自分も、その人気につられる格好で村上春樹作品を読んできたものの、率直な感想を記せば「良くわからない」でした。

 

 ただ、漢詩でいえば起承転結、能でいえば序破急、西洋音楽でいえばソナタ形式で構成し、軽重があるにせよ感動を与える日本文学と、どこかが違う、それを抱いていました。「村上春樹文学の謎」といったところです。

 

 こんな思いを抱き続けていた3年前、富士市で開かれた『文芸あれこれ講座』で、横浜国立大学や早稲田大学などで講師をつとめる文芸評論家の助川幸逸郎氏の村上春樹作品の魅力を探る講義を受講する機会がありました。

 

 講義で助川氏は、「現役の日本人作家での中でもっとも海外で知られている村上春樹であるものの、国内にも熱狂的なファンがいる一方、『わけのわからない話ばかり書く』という声も普通の読書好きの中から聞こえてくる。国際的名声があるのに作品は謎だらけ」と語り、広く知られた欧米文学作品を紐解きながら日本文学との違いを指摘、「村上春樹文学は欧米文学スタイルだから」を、日本人が抱く謎の原因と結論付けました。

 さらに、日本文学と欧米文学の違いについて助川氏は、日本文学が読後の響きを重視するのに対し、欧米文学は読む過程におけるメッセージを重視することをあげた、そんなことを講座で語ったことを記憶しています。

 

「なんとなく村上春樹文学の謎が解けた」といった感じでした。

 

 さて、今年のノーベル文学賞と決定したアメリカのシンガー・ソングライター、ボブ・ディラン氏の受賞理由は、「アメリカの伝統音楽にのせて新しい詩の表現を創造した」と発表されていますが、発表以降、嵐のような賛否の声がネットを通して世界中を駆け巡っています。

 100年の歴史があるノーベル文学賞で、音楽家、それも自作自演歌手(シンガー・ソングライター)が受賞者となったのは初めて。加えて「歌は文学なのか」という異議を呈する意見が強くあることも嵐のような賛否となっているようです。

 

 しかし、10月16日付けの購読紙の社説に掲載された一文を読み、「選考機関であるノーベル・アカデミーがノーベル文学賞の意義をボブ・ディラン氏の受賞をもって世界に示した」、そんな思いを抱いています。

 

 一文には、「ボブ・ディラン氏が彗星のように出現した1960年代の米国は荒れていた。…絶望の中でボブ・ディラン氏はメッセージを込めたプロテストソング(講義の歌)で若者の心を揺さぶった。その歌は押しつけがましい『答え』は示さず、疑問形、比喩の連続で、聴く者に自ら答えを考える『自由』を与えたのだ。…ボブ・ディラン氏の登場から半世紀以上がたった今、デビュー当時、テーマとなった人種差別も戦争も終わるどころか混迷は深まっている。『飢えはひどく、魂は忘れ去られた』(『はげしい雨が降る』)情景が、なおも世界を覆っている」と記されています。

 

 

 

 そこには、文学とか歌といったジャンルを超え、言葉(活字)は、この人間社会に警鐘を鳴らす力を持っている、そのメッセージが明確に打ち出されています。

 先の評論家、栗原氏の言葉を借りれば、「ノーベル文学賞というのは、人気ではなく、どんなメッセージを内包しているかが重要だ」です。

 

 あれこれ徒然なるままに記しましたが、村上春樹氏にノーベル文学賞が輝くことを日本人として期待し、その期待をもって今後も村上春樹文学を読み続けます。並行して「読解力もつけなければ…」ですが…。

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